会社設立の経緯

私達は、電子カルテを通して医療をより良くするために、ベースになる入力ツールの部品を開発する目的で、大学発ベンチャーとして創設された会社です。

診療録は、紙で管理されていた時代から、電子カルテの時代に変わってきました。紙の記録をデジタル化することで、カルテの取り出し・搬送が不要になり、医療者間の情報の共有が進みます。しかし、電子カルテのメリットはそれだけに留まるべきでありません。コンピュータのすばらしい能力を発揮させて、記録されたデータを分析して新たな知見を得たり、診断や治療法の選択などの局面で医師の判断を支援するなど、医療の質向上に寄与するものとなるはずです。

 電子カルテにこうした高度な処理をさせるためには、コンピュータが処理可能な形でデータが記録される必要があります。フリーテキストで記録されたデータを処理させることは、不可能ではないとしても、現実にはなかなか大変です。そこで、私達は、テンプレート方式での入力について研究開発してまいりました。一般には、テンプレート方式では、単純な内容については入力可能でも、複雑で多様な情報の入力は難しいと考えられてきました。私達は、入力された値に応じて次の項目が変化させることで、複雑で多様な情報でもテンプレートでの入力を可能としてきました。また、入力データは構造化データとして出力すると同時に、違和感のない自然な文に変換して出力する機能を持たせました。この入力ツールにダイナミックテンプレートと名前を付けました。

 入力テンプレートを診療現場で便利に使うためには、利用者の思う言葉が、期待するタイミングで表示され、ストレスなく言葉が選択できることが必要です。そのためには、テンプレートのプログラムの機能だけではなく、項目・選択肢やその表示制御を記録したテンプレートマスター(コンテンツ)が重要になってきます。病院は多くの専門職の集団であり、それぞれがそれぞれの専門用語を扱っています。従って、一つの病院で必要とされるテンプレートコンテンツの数は膨大となります。これらをそれぞれの病院で準備するとなると、大変な労力を要することになってしまいます。

当社は、ダイナミックテンプレートのプログラムを電子カルテベンダーに提供するだけでなく、様々な専門職に応じたコンテンツも利用者に提供し、更に、利用者のリクエストに応じて作成するサービスを行っています。病院が異なっても、それぞれの専門領域で使われる言葉は共通しており、共通して利用できるテンプレートは多くあります。それぞれの病院が個別に準備するよりもはるかに効率良く、良いコンテンツを利用いただけるようになるはずです。

1999年の会社設立以来、同じテーマで取り組んできました。ダイナミックテンプレートは、当初から日本電気株式会社様、株式会社シーエスアイ様の電子カルテで採用して頂いておりましたが、現在では多く電子カルテベンダーに採用して頂いており、多くの医療機関で利用されています。提供するコンテンツの数は10万件を超えています。

新しい挑戦

テンプレート技術を供給する基本サービスは安定してきましたので、私達でもテンプレート技術を生かした新しいサービスを開発し提供を開始しています。

 臨床研究を支援するためのCDCS(Clinical Data Collection System)をデザインし、電子カルテに組み込むCRFレポータと呼ぶシステムを開発し、提供しています。このシステムは、テンプレートで入力したデータを標準形式の電子症例報告書フォーム(CDISCが定めたODM)にマッピングし、多施設のデータを収集する機能です。多施設にコンテンツを配信する機能も備わっており、多施設で共通するテンプレートを利用がきます。疾患レジストリ等では、診療データがレジストリデータになることに加え、検査データや処方データを取り込むことで、データ収集作業が圧倒的に効率化されます。コンテンツを変更することで、様々なレジストリに対応できるのが特徴です。

大阪大学とその関連病院で形成するOCR-netで行われる多数の臨床研究で利用され実績を挙げています。また、がんゲノム医療、外科学会が主導するNCDでの臨床データの収集に利用されています。

 診断・意思決定支援機能を実現するために、メディカルレビュー社と共同してメディカルレビュー社が編集する「診療ガイドラインUP-TO-DATE」に掲載されている内容をテンプレート化し、ガイドラインに沿った患者の評価が容易にできるようにし、対応するガイドラインを直ぐに閲覧できるようにしました。

 スマートフォン・タブレット用のテンプレート(セルフ入力テンプレート)を開発しました。患者さん自身のスマートフォンや病院が提供するタブレットで、患者さんの症状、アレルギー、喫煙・アルコール等の生活習慣などを入力してもらい、このデータを電子カルテテンプレートに取り込む機能をなります。医師・看護師の記録の負担を減らすだけでなく、より詳細な症状等の情報を収集することが可能になると期待しています。

これからの計画

テンプレート入力の問題は、精緻な内容のものを作れば作るほど、多種類のテンプレートができてしまい、診療時に多くのテンプレートの中から利用すべきものを選ぶわずらわしさが増えることになります。その問題を解決させるために、利用者に診療テーマを登録してもらうことで、選択されるべきテンプレートを利用者に提示する機能を開発しています。これにより、テンプレートが選びやすくなり、診療テーマに応じた一連の記録が誘導され、構造化データとして入力されるようになります。これにより、診療テーマに応じたサマリが自動作成され病歴把握が容易になるだけでなく、診療テーマ毎に統一性のある記録が残ることになり、臨床研究としても価値あるデータが生成されることになるはずです。

私達は、電子カルテの入力ツールを進化させることで、電子カルテの機能を充実させ、これにより医療の質向上に寄与し、更には、高品質のReal World Dataを生成することを目指しています。